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転職の退職金はどうなる?減る条件・もらえる額・税金を解説

転職の退職金はどうなる?減る条件・もらえる額・税金を解説

この記事では、転職したときに退職金がどうなるかを、もらえる条件・金額の目安・企業年金の手続き・受け取り時の税金の順に整理します。転職先を選ぶときの退職金の見方も紹介します。

転職すると退職金はどうなる?まず押さえたい3つの分かれ道

退職金は法律で支払いが義務づけられた制度ではなく、あるかどうか、いくらになるかは会社の規程次第です。転職すると、退職金は次の3つのどれかに分かれます。

  • 満額に近い額を受け取れる:勤続年数が長く、会社都合や定年に近い退職の場合
  • 減額されて受け取る:自己都合退職で、勤続年数に応じた支給率が低く設定されている場合
  • 受け取れない:勤続が短く最低支給年数に届かない場合や、そもそも制度がない会社の場合

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業は74.9%でした。約4社に1社は退職金制度そのものがない計算です。制度がある企業の内訳は、退職一時金のみが69.0%、退職年金のみが9.6%、両方を併用する企業が21.4%となっています。

在職中に転職を考え始めた人が最初に不安になるのは、たいてい「今辞めたら退職金はいくら減るのか」という点です。順番に確認していきます。

転職で退職金が減る・もらえないのはどんなとき?

自己都合退職は会社都合より金額が下がりやすい

転職を目的に辞める場合は自己都合退職です。多くの会社では、自己都合の支給額を会社都合より低く設定しています。東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」の大学卒モデルでは、次のような差が出ています。

勤続年数自己都合会社都合差額
10年112.1万円149.8万円37.7万円
20年343.1万円414.7万円71.6万円
30年653.6万円754.2万円100.6万円

勤続が長いほど差額は広がります。会社の規程によって数字は変わるため、あくまで中小企業の一例として見てください。なお、会社都合での退職になる場合は、履歴書への書き方も変わります。あわせて履歴書の会社都合退職の書き方も確認しておくと安心です。

勤続年数が短いと退職金が出ない会社もある

退職金規程に「勤続3年以上」「勤続5年以上」のような最低支給年数を定めている会社があります。この年数に届かないと、自己都合では支給ゼロになります。あと数か月で支給条件を満たすのに、その手前で辞めてしまうケースは珍しくありません。

転職を決める前に就業規則で見ておく5項目

退職日を決めてから規程を読む人が多いのですが、順番は逆です。退職届を出す前に、就業規則や退職金規程で次の項目を確認してください。

  • 退職金制度の有無と、支給対象になる雇用区分
  • 自己都合と会社都合それぞれの支給率
  • 最低支給年数(何年勤めれば対象になるか)
  • 退職日がずれた場合に勤続年数の区切りを超えるかどうか
  • 支給時期(退職後いつ振り込まれるか)と、減額・不支給になる条件

規程が手元にない場合は、人事部や総務に「退職金制度について確認したい」と聞いて問題ありません。転職の意思を伝える必要はありません。

転職時の退職金はいくら?平均額と目安

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」では、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者の平均退職給付額は、勤続35年以上で2,037万円でした。勤続年数別の平均は次のとおりです。

勤続年数平均退職給付額(大学・大学院卒)
20〜24年1,021万円
25〜29年1,559万円
30〜34年1,891万円
35年以上2,037万円

この調査は勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者が対象で、転職で辞める人の受取額とは別物です。勤続10年前後で自己都合退職をした場合は、先ほどの東京都の例のように100万円台から300万円台になる会社が多く、定年まで勤めた場合との差は大きくなります。

企業年金・確定拠出年金・中退共は転職でどうなる?

退職金が「年金」の形で積み立てられている場合、手続きを忘れると不利になる制度があります。会社の制度ごとに整理します。

制度転職時の主な扱い
退職一時金退職時に一括で受け取る。自己都合・会社都合で支給率が変わる
確定給付企業年金(DB)制度ごとに規約が異なる。受け取り方法や持ち運びの可否は人事部に確認する
企業型確定拠出年金(DC)転職先の企業型DCかiDeCoへ移す手続きが必要。放置すると自動移換される
中小企業退職金共済(中退共)転職先も中退共なら、退職後3年以内に申し出ると掛金の期間を通算できる

企業型DCは6か月以内の移換が必要

企業型DCは、退職の翌月から6か月以内に移換の手続きをしないと、年金資産が国民年金基金連合会へ自動的に移されます。自動移換されると、掛金の拠出や運用ができなくなります。この期間は通算加入者等期間にも含まれず、60歳時点で通算10年に満たないと受給開始年齢が遅れる可能性があります。手数料も発生します。

移換先は、転職先に企業型DCがあればその制度、なければiDeCoです。金融機関の案内では、移換の手続きに2〜3か月かかるとされているため、転職が決まった段階で早めに動いてください。

中退共は退職後3年以内の申し出がカギ

中退共は、転職先も中退共に加入していれば、前後の掛金納付期間を通算できます。申し出の期限は退職後3年以内です(2016年4月の改正で2年から延長)。転職先が中退共に未加入の場合は対象外のため、共済手帳の扱いは前の会社に確認してください。

転職時の退職金にかかる税金と手続き

退職金は、給与と比べて税負担が軽くなるよう、退職所得控除と2分の1課税の仕組みがあります。計算の流れは次のとおりです。

  • 退職所得控除額を求める:勤続20年以下は40万円×勤続年数(最低80万円)、勤続20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年)
  • 退職金から退職所得控除額を引く
  • 引いた残りの2分の1が、課税の対象になる退職所得の金額

勤続年数の1年未満の端数は切り上げて数えます。たとえば勤続10年で退職金が400万円なら、控除額は400万円なので課税される額は0円です。勤続30年で2,000万円なら、控除額は1,500万円、残り500万円の半分である250万円が課税対象になります。

「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと損をする

退職金を受け取る前に、会社へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。提出しないと、退職金の全額に20.42%の所得税が源泉徴収されます。後から確定申告で取り戻すことはできますが、手間がかかります。

退職届と一緒に出し忘れる人が多い書類です。前の会社から退職金を受け取る際に、人事部へ「申告書を出したい」と伝えてください。過去に別の会社から退職金を受け取っている場合は、申告書に記入欄があるため、その源泉徴収票も手元に用意しておきます。

勤続5年以下は2分の1課税に上限がある

令和4年1月以降の退職では、役員等以外で勤続5年以下の人の退職金は、控除後の残りのうち300万円を超える部分に2分の1課税が使えません。たとえば勤続4年で退職金が800万円の場合、控除額は160万円で、課税対象は150万円+(800万円−460万円)=490万円です。短期間で辞める場合は、思ったより税金が重くなる点に注意してください。

退職金が減るのを理由に転職をためらうべきか

勤続年数が伸びるほど退職金が増える仕組みを知ると、「ここで辞めたら損をする」と動けなくなる人がいます。ただ、損得は退職金だけでは決まりません。

先ほどの東京都の例では、自己都合の退職金は勤続20年で343.1万円、30年で653.6万円でした。10年勤め続けた場合の増加分は310.5万円、1年あたりに直すと約31万円です。転職で年収が年31万円以上上がり、その状態が続くなら、退職金の増加分は年収の差で埋まる計算になります。

もちろん、転職先の昇給や退職金制度によって結果は変わります。次の3点で、現在の会社と転職先を同じ基準で比べてください。

  • 退職金の有無と、勤続10年・20年時点の目安額
  • 年収と賞与の水準(退職金がない会社は年収に反映されていることがある)
  • 企業型DCや中退共など、退職金の代わりになる制度の有無

退職金制度がない会社に転職する場合は、iDeCoや新NISAなどで自分で老後資金を積み立てる前提で考えます。求人票に退職金の記載がないときは、面接や内定後の条件確認で聞いても失礼にはなりません。

まとめ

転職時の退職金のまとめ

  • 退職金は法律上の義務ではなく、制度がある企業は74.9%(令和5年就労条件総合調査)
  • 自己都合退職は会社都合より金額が下がりやすく、最低支給年数に届かないと出ない会社もある
  • 企業型DCは6か月以内、中退共は3年以内の手続きが必要
  • 受け取る前に「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと、全額に20.42%が源泉徴収される

退職届を出す前に、退職金規程と退職日の区切りを確認してください。

転職の退職金に関するよくある質問

転職すると退職金はもらえなくなりますか?

自己都合で退職しても、会社に退職金制度があり、最低支給年数などの条件を満たしていれば受け取れます。ただし、会社都合より支給額が低く設定されていることが多く、勤続年数が短いと支給されない場合があります。就業規則や退職金規程で確認してください。

転職先に退職金制度がない場合はどうすればいいですか?

厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、約4社に1社が退職給付制度を設けていません。その場合は、年収や賞与で補われているかを確認したうえで、iDeCoや新NISAなどで老後資金を自分で積み立てる計画を立てると安心です。

前の会社の退職金は、転職先の退職金に引き継がれますか?

退職一時金は、退職時に精算して受け取るのが一般的で、転職先に引き継がれるのは中退共の通算など限られたケースです。企業型DCは転職先の制度かiDeCoへ移換でき、移換しないと国民年金基金連合会へ自動移換されます。

退職金の税金は確定申告が必要ですか?

「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払い前に会社へ提出していれば、通常は源泉徴収で課税が完結し、確定申告は不要です。提出しなかった場合は全額に20.42%が源泉徴収されるため、払いすぎた分は確定申告で取り戻せます。