この記事では、退職後に雇用保険の失業手当(基本手当)を受け取るための条件と、離職票の受け取りから受給開始までの手続きの順番を整理します。2026年8月に改定された日額の上限や、自己都合退職の給付制限が原則1か月になった点もあわせて解説します。
退職後に雇用保険から受け取れる失業手当とは
一般に「失業保険」と呼ばれるお金の正式名称は、雇用保険の「基本手当」です。退職後に自分でハローワークへ求職の申込みをして初めて受給の手続きが始まる仕組みのため、会社を辞めただけで自動的に振り込まれることはありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請先 | 住所を管轄するハローワーク |
| 受給できる期間 | 離職日の翌日から原則1年間 |
| もらえる日数 | 90日〜360日(離職理由・年齢・加入期間で決まる) |
| 1日あたりの金額 | 離職前の賃金日額の約50〜80%(60〜64歳は45〜80%) |
退職を決めた段階で「自己都合だから不利になるのでは」と不安になる方は少なくありません。実際には、離職票に記載される離職理由と加入期間で、待ち時間も日数も変わります。仕組みを先に知っておけば、退職後に慌てずに済みます。
退職後に雇用保険の失業手当をもらえる3つの条件
失業手当を受け取るには、次の3つをすべて満たす必要があります。
条件① 離職前2年間に雇用保険の加入が通算12か月以上ある
原則として、離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要です。倒産・解雇などの会社都合で離職した人や、特定理由離職者に当たる人は、離職前1年間に6か月以上で足ります。
被保険者期間は、賃金の支払い基礎日数が11日以上ある月を1か月として数えます。加入しているか不明なときは、給与明細に「雇用保険料」の控除があるかを確認してください。転職を挟んでいる場合は前職の期間と通算できることがあるため、ハローワークで確認できます。
条件② 「失業の状態」にある
ハローワークでいう失業とは、就職しようとする積極的な意思と、いつでも働ける能力があるのに仕事に就けていない状態です。次のような場合は、その間は失業の状態に当たりません。
- 病気・けが・妊娠・出産・育児などで、すぐには働けない
- 転職先がすでに決まっていて、退職後すぐに入社する
- 働く意思がなく、しばらく休養したいだけの場合
病気や出産などで働けない人は、受給期間を延長する手続きがあります(詳しくは後述します)。
条件③ ハローワークで求職の申込みをしている
離職票などの書類を持ってハローワークに行き、求職の申込みをして受給資格の決定を受けます。この手続きをしない限り、条件①②を満たしていても受給は始まりません。
退職から失業手当を受け取るまでの手続きの流れ
退職日から振込みまでは、次の順番で進みます。会社側の手続きが終わらないと離職票が発行されないため、退職前に依頼しておくと後がスムーズです。
- 退職前に、会社へ離職票の発行を依頼する(59歳以上は離職票の交付が必須。59歳未満は本人が希望すると交付されます)
- 会社が、資格喪失届と離職証明書をハローワークへ提出する(期限は、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内)
- 離職票1・離職票2が自宅に届く
- 離職票、マイナンバー確認書類、身分証明書、雇用保険被保険者証、写真などを持って、住所管轄のハローワークで求職申込みをする(必要書類は窓口の案内で確認してください)
- 受給資格が決定し、7日間の待期期間に入る
- 雇用保険説明会に参加する(自己都合退職の場合は、待期後に原則1か月の給付制限がある)
- 原則4週間に1回の失業認定日にハローワークへ行き、求職活動の実績を申告する
- 認定を受けた分の失業手当が口座に振り込まれる
| 離職理由 | 受給資格決定後の流れ |
|---|---|
| 会社都合など | 待期7日間 → 失業認定 → 振込み |
| 自己都合(正当な理由なし) | 待期7日間 → 給付制限(原則1か月)→ 失業認定 → 振込み |
離職票が届かないとき
退職から日数がたっても離職票が届かない場合は、まず会社の人事・総務に、資格喪失届をハローワークへ提出したかを確認します。提出が済んでいなければ、期限は退職日の翌日から10日以内と決まっているため、その旨を伝えて催促できます。
会社が手続きを進めない場合は、退職者本人が管轄のハローワークに相談できます。本人からの「確認の請求」により、離職票が交付されるケースがあります。離職日から受給期間のカウントが進んでいるため、届かないまま放置しないことが肝心です。
自己都合と会社都合の違い|給付制限と給付日数
同じ「退職」でも、離職理由が自己都合か会社都合かで、受給開始までの待ち時間ともらえる日数が変わります。
| 項目 | 自己都合(正当な理由なし) | 会社都合(特定受給資格者など) |
|---|---|---|
| 給付制限 | 原則1か月 | なし |
| 必要な加入期間 | 離職前2年間で12か月以上 | 離職前1年間で6か月以上 |
| 所定給付日数 | 10年未満90日/10年以上20年未満120日/20年以上150日 | 90〜330日(年齢と加入期間で決まる) |
会社都合の日数は、たとえば45歳以上60歳未満で加入20年以上の場合に330日となります。自己都合は年齢に関係なく、加入期間だけで最大150日です。
自己都合退職の給付制限は、2025年4月1日以降の退職から原則1か月に短縮されました。2025年3月31日以前の退職は原則2か月です。ただし、退職日から遡って5年以内に正当な理由のない自己都合退職で受給資格の決定を2回以上受けている場合は、3か月になります。
2025年4月以降にリスキリングのための教育訓練を受けた場合は、申出により給付制限が解除される制度もあります。訓練実施施設が発行する、訓練開始日の証明書が必要です。
会社都合に当たる可能性がある残業の目安
自己都合で辞めたつもりでも、長時間労働が原因なら「特定受給資格者」として会社都合と同じ扱いになる場合があります。施工管理など現場系の職種では、特に確認する価値があります。離職の直前6か月の時間外労働が、次のいずれかに当たるかが目安です。
- いずれか連続した3か月で、時間外労働が月45時間を超えている
- いずれか1か月で、時間外労働が100時間を超えている
- いずれか連続した2か月以上の平均で、時間外労働が月80時間を超えている
当てはまりそうな場合は、タイムカード・勤怠記録・給与明細など、残業時間を示す記録を退職前に手元へ残しておくことが判断材料になります。最終的な認定はハローワークが行うため、早めに窓口へ相談してください。
離職票の離職理由に納得できないとき
離職票2には、会社が記載した離職理由に対して、本人が異議の有無を記入する欄があります。会社が「自己都合」としていても、事実と違うと感じたら「異議あり」としたうえで、残業の記録などの資料を持参して相談します。離職理由を決めるのは会社ではなく、事実関係を確認したうえでのハローワークです。
失業手当の金額|日額の計算と2026年8月改定の上限額
1日あたりの金額(基本手当日額)は、離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割った「賃金日額」をもとに決まります。ボーナスなどの賞与は含みません。
たとえば月給30万円なら、賃金日額は30万円×6か月÷180で1万円です。基本手当日額は、その約5〜8割が目安になります(賃金が低いほど給付率は高くなります)。
基本手当日額の上限は、2026年8月1日から引き上げられました。年齢区分ごとの上限額は次のとおりです。
| 離職時の年齢 | 基本手当日額の上限(2026年8月1日〜) |
|---|---|
| 30歳未満 | 7,450円 |
| 30歳以上45歳未満 | 8,270円 |
| 45歳以上60歳未満 | 9,110円 |
| 60歳以上65歳未満 | 7,830円 |
下限額は2,562円です。月給が高くても上限を超えて受け取ることはできません。実際の金額は離職票の賃金額で決まるため、受給資格決定時に交付される受給資格者証で確認できます。
退職前後に確認したい注意点|受給期間1年と延長
受給期間は離職日の翌日から1年で終わる
所定給付日数が残っていても、受給期間(原則1年)を過ぎると残りは受け取れません。しかも自己都合退職では、待期7日と給付制限1か月が先に入ります。手続きを後回しにするほど、日数を使い切れなくなるおそれがあります。
「少し休んでから動こう」と考えている場合でも、離職票が届いた時点でハローワークへ行っておくと、使える期間を減らさずに済みます。
すぐ働けない事情があるときは受給期間を延長できる
病気・けが・妊娠・出産・育児などで引き続き30日以上働けなくなった場合は、その日数分だけ受給期間を延長できます。延長できる期間は最長3年です。手続きの時期や必要書類は、ハローワークで確認してください。
退職前に整えておきたいこと
- 離職票の発行を会社に依頼し、郵送先の住所を伝えておく
- 雇用保険被保険者証や給与明細など、加入状況がわかる書類を手元に置く
- 残業の記録など、離職理由を裏付ける資料を残しておく
- 履歴書の職歴欄に書く退職理由と、離職票の離職理由に食い違いがないか確認する
退職理由の書き方は、履歴書で「一身上の都合」を書かない判断と状況別の書き方で整理しています。また、退職時の挨拶メールは退職の御礼メールの例文が参考になります。
就職が決まったら受け取れる再就職手当
失業手当の受給中に早く安定した仕事が決まると、残りの給付日数に応じた再就職手当を一時金として受け取れます。主な条件は次のとおりです。
- 就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある
- 1年を超えて勤務することが確実と認められる
- 待期期間(7日間)が終わった後に就職している
- 給付制限がある人は、待期満了後1か月以内の就職がハローワークなどの紹介によるものである
- 離職した会社や関連会社への再就職ではない
| 就職日時点の支給残日数 | 支給率 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 70% |
| 所定給付日数の3分の1以上3分の2未満 | 60% |
支給額は「支給残日数×支給率×基本手当日額(上限あり)」で計算します。申請は、就職日の翌日から1か月以内に、再就職手当支給申請書を受給資格者証とあわせてハローワークへ提出します。
受給期間中に早く再就職すれば、受け取り損ねる日数を再就職手当に変えられます。再就職後すぐに退職してしまった場合の扱いは、再就職後すぐに退職した場合の失業保険で解説しています。
手続きと並行して次の職場を探すなら、給付制限の1か月や認定日の合間に求人を比べられる時間は意外と短いため、早めに動いておくと選択肢を狭めずに済みます。ここまで読んで手が止まっているなら、先に転職のプロへ状況を話すだけでも、次の一手が見えてきます。
まとめ
退職後の雇用保険のポイント
- 失業手当は、離職票を受け取りハローワークで求職申込みをして初めて始まる
- 条件は、加入期間(2年で12か月以上、会社都合は1年で6か月以上)・失業の状態・求職申込みの3つ
- 自己都合の給付制限は、2025年4月以降の退職で原則1か月
- 長時間労働が原因なら、会社都合と同じ扱いになる可能性がある
- 受給期間は離職日の翌日から原則1年。手続きの先延ばしが一番の損につながる
退職が決まったら、離職票の依頼と残業記録の保管を先に済ませ、離職票が届いたその週にハローワークへ向かう流れがおすすめです。
退職 雇用保険に関するよくある質問
雇用保険に加入しているかは、どこで確認できますか?
パートやアルバイトでも失業手当はもらえますか?
転職先が決まっている場合も失業手当はもらえますか?
失業手当をもらいながらアルバイトをしてもよいですか?
手続きが遅れた場合、失業手当はどうなりますか?
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